マダガスカル国 アロチャ湖南西部灌漑整備・流域管理計画準備調査
事業期間
2015年7月~2015年8月(0.7ヶ月間)事業形態
JICA調査事業(無償資金協力準備調査)目標
マダガスカル国(以下「マ」国)では、コメは国民にとって非常に重要な農作物であり、年間一人当たり約120kgを消費しています。結果、コメの消費量は世界第1位です。しかし、サイクロンや、干ばつ等の自然災害や虫害により、生産は大きく影響を受け、年間生産量の変動が激しい。また、稲作の生産性が低く、生産量の増加にむけた能力向上が必要とされています。その理由の一つに、伝統的な灌漑システムの存在があり、全国各地に、棚田のような灌漑水田が広がっています。近年、これら多くの灌漑稲作地帯では、その上流域からの土砂流入により、灌漑施設の機能が低下しています。この要因は、住民による過度の焼畑・伐採や、森林火災の結果、森林による土壌保全機能が低下していることが考えられ、これを防ぐためには、上流域の土壌保全・管理が必要となっています。
この様な状況に対し、「マ」国政府は、全国の既存水田約100万haを対象とした灌漑整備事業と、灌漑地区上流域の植生回復・植林による持続的水源涵養事業を一体的に実施する国家ブログラム「流域管理・灌漑国家プログラム(PN-BVPI)」を2006年に策定し、コメの生産基盤強化を図ろうとしています。このため、「マ」国政府は、前記PN-BVPIで掲げられたコメの生産基盤整備を進めるため、国内最大の稲作地帯であるアロチャ湖周辺における灌漑施設の整備(改修)と機材供与を中心とした無償資金協力を我が国に対し要請してきました。
本業務は、一般無償資金協力の活用を前提として、下記の内容について調査し、JICA及び日本国政府が無償資金協力の審査を行う際に必要な基礎的資料を提供することを目的としたものです。
活動内容
主な調査内容は以下の通り。- プロジェクトの背景、目的及び内容の把握
- 効果、技術的・経済的妥当性の検討
- 協力の成果を得るために必要かつ最適な事業内容・規模を検討し、概略設計を行う
- 概略事業費の積算
- プロジェクトの成果・目標を達成するために必要な「マ」国側分担事項の内容、実施計画、運営・維持管理等の留意事項などの提案
担当者から
本業務では、流域管理としてラバカ対策(崩壊地対策)を担当した。当初、マ国側からの要請に基づき、具体的なラバカ対策として下記の方針が定められていました。a) 大規模な工事を必要とするものは除外し、現地NGOあるいは現地土木業者に委託して対応できる範囲内のものとする。
b) 植林については、ラバカの崩落進行措置への対応として考え得るものに限定する。
c) 上流域に広がる荒廃草地・灌木地における植林は本事業の対象とはしない。
d) 104箇所のラバカ対策が必要とされている候補地に関して、優先度をつけて絞り込みを行う。
しかしながら、本調査の前段階の調査であるアロチャ湖南西部灌漑整備・流域管理計画準備調査で、上流域を調査したところ、対策の必要性のあるラバカが多数存在することが確認された。このため、事前調査団としては、流域管理対策の一環としてのラバカ対策の緊急性や必要性は認識するものの、本事業地区の集水域におけるラバカの規模・数量は無償資金協力事業の枠組み超えるものと判断しました。また、ラバカ対策は、投資と効果発現の観点からも極めて長期的な時間軸の中での取り組むべき対策であるとしました。
結論は、対象地区集水域のラバカ対策は一つの無償資金協力事業で対応できる数量・規模を超えていると考察されることから、本無償資金協力事業においてラバカ対策の実施は困難であると判断し、農業省と協議の結果、ラバカ対策は本事業から除外されることになりました。
従い、本調査において担当は、ラバカ対策にかかる具体的な施工管理計画の策定は行わず、ラバカ発生のメカニズム、現状、その対策を示すための調査を実施するにとどまることになりました。


アロチャ湖上流域のラバカ(崩壊地)

小高い丘の上より灌漑地区を望む

灌漑施設の調査